はぐくむ

ちいさな いのちをはぐくむ ちいさな日記です

誕生! 1幕

あれよあれよと入院して、いわれるがままモニターをつけて観察すること1時間。

外で診ていただいたU先生がいらして
「担当させていただきます。Uと申します。今の状況と今後のことを説明しますね。」
とても渋くていいお声でお話ししてくださいました。
 
このU先生、ロマンスグレーの短髪にやや角ばった輪郭。恵比寿様のようなふくよかな耳。
安心感を全身から発していらっしゃいます。
 
落ち着いた声色でモニターから読み取れる赤ちゃんの様子。
私の筋腫を含めての身体の様子
これからのこと。
淡々と、冷た過ぎず緩すぎず。短く的確に分かりやすく。
素晴らしい説明でした。そして、これから出産することへの覚悟へわたしを優しく導いてくれました。
 
2日後。帝王切開にて。
はぐくんできた、小さな命に出会います。
 
……………………………………………………………………
 
 
 
と。そんなこんなの穏やか覚悟劇で、家族も家路に着きました。
わたしも、モニターからの小さな心音を心地よく耳にし、もう直ぐ出会うこのハーモニーを奏でる主を想像しながら、一人ベッドの上で心静かな夜を迎えておりました。
 
 
遠くからパタパタと廊下をかける音。慣れない夜の病院で聴覚は鋭くなっていました。
この街で深夜働く医療従事者の方々を思いながら、大変なお仕事だなぁと呑気に思っていると、その足音はわたしの部屋の前でピタッと止まり。。。。
 
今から手術になりましたよ。準備しましょうね〜。
 
事態は急展開! 予定誕生日は繰り上げ!
 
えーーーーー?今から?
思わず、マジ?っと普段使わない言葉がわたしの口から飛び出て、助産師さんもマジ!っと合わせて返し、にっこり。
わたしもにっこり。ほっこり………してる場合じゃありません。
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!
 
驚きを消化しないまま、驚いたまま、わたしは看護師さんの指示通り着替えたり、処置されたり。
慌ただしく働く看護師、助産師さんの間からU先生登場。
「赤ちゃん苦しそうだから、もう、出してあげましょう。今なら元気だから!頑張りましょ!」と勢いよく声をかけて、颯爽と去って行きました。オペ室に。
間髪入れずに麻酔科の先生。
明らかにわたしのために起こされてきたご様子。少しワイルドなヘアースタイルのまま。
「麻酔科の〇〇です。お部屋準備して待ってますからね。」とふにゃふにゃの声で挨拶して去って行きました。オペ室に。
 
それから看護師、助産師さんの動きはみるみる加速していきました。
BGMはドリフの8時だよ全員集合!で流れる、場面転換の曲!
そう!あれ、あれ。
チャチャチャ    ちゃっちゃらチャッチャ     ちゃっちゃらチャッチャ     チャチャちゃーん  ♬
チャチャチャ     ちゃっちゃらチャッチャ    ちゃっちゃらチャッチャ     チャチャちゃーん ♬
 
わたしは一切をプロフェッショナルのお仕事に委ねて、「お誕生日繰り上げ!」ともう1人の命の源の方にメールを一通送りました。
 
つづく
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あれよあれよと 入院。

妊娠38週目、もういつ生まれてもいいよー。
しかし、なかなか下がってきません。モニター観察していると、心拍が落ちることがありました。
姿勢を変えて、すぐに回復しましたが、緊急の時に筋腫が邪魔して対応できないとのことで、大きな病院を紹介されました。
受診してみると、今から入院してください!

えーーーーー。です!

すぐに家のこと、上の子供たちのことがダダ〜っと頭をよぎって。
一回戻らせて下さい。とお願いしました。

すると、お母さん!今はお腹の赤ちゃん守って下さい!
医師の厳しいでも、当然な言葉が返ってきました。

そうです。この授かった命を守れるのは私にしか出来ないのです。

何としても、守らなきゃ!です。

ということで、そのまま入院。
バタバタ検査して、連続モニタリング中です。赤ちゃんの心音がずーっと聞こえてるので、なんだか今まで以上に愛おしく感じます。


大きなおなかが抱える、小さな悩み

つま先から指先まで神経を研ぎ澄ませ、創造を表現することに取り憑かれて生きてきました。

というと、大げさなのかもしれませんが、身体を動かすことを仕事としています。
ですから、ボディケアーやメンテナンスが歯を磨くことと同じように、日常に溶け込んでいます。

人の身体に触れることも多く、道行く人の歩き方や立ち姿を観察して、その人の癖や動きの様子を想像することも良くあります。
大切な人との暖かくとけるような静かな時間の中でも、
ここの筋肉が張ってるな〜とか
ちょっと関節が動きずらいな〜 などと感じてしまう困った癖もあります。

ちょっとどうでもいいことでした。

とにかく、手が開けば無意識に足のケアをしています。裏をもみもみ。指をクルクル。
そして、冷やすことが嫌いなので一年中5本指ソックスを履いています。
妊娠35週。大きくなったおなかでは、このソックスが履きにくい!!
お風呂で洗うことも爪を切ることもとってもやり難い!

そんなの履かせてもらえば、切ってもらえばいいじゃん。っと言われてしまうかもしれませんが、この日常が出来なくなることってとてもストレスになります。

届くところに届かない。

期間限定の妊娠生活の中で、嬉しいこともたくさんありますが、自分の身体が思い通りに動かし難いということはこんなに大変なことかと感じます。
これもかわいい赤ちゃんに会うため!
もう少しの時間だわ!
と自分を励ましながら、今日も5本指ソックスを履いています。

はぁ〜。もう少し、もう少し!



運動してください。下がってませんよ!

妊娠35週に入りました。

おなかも重く、足元も見えないので動きもゆっくり。

肋骨まで届きそうな力強い胎動にイタタタっと声をあげて、よいっしょ!の掛け声が違和感なく出てくるようになりました。

体重増加もここのところは赤ちゃんの分だけぐらいにとどまり、軽い貧血以外は優秀妊婦さん! と自負しておりました。

前回までは、筋腫さんも少し小さくなっていて、このままいけば自然分娩で下から産みましょうね〜!
なんて会話を担当医の先生と交わしておりました。

わたしもはじめてのことでもないので、はいはーい!とお気楽に構えておりました。

 ところが‼︎

 先日、エコーを見る先生のお顔がちょっと曇り気味。
あの…。運動してます?と聞いてきました。

えー?

というのも、もともと身体を思いっきり使った仕事ですので、今もできる範囲で身体を動かし続ける日々を送っています。そんなに動いて大丈夫か?と周りが心配するほどです。
ところが、先生はうーんと唸りながら

歩いたり、マタニティ体操とか、とにかく運動してください!!

と、鼻息荒く言ってきました。おまけに、最終宣告のように

次の健診で下がってなかったら、国立の病院を紹介しますね〜。と……。

なに〜!!
ということは、帝王切開の可能が再び浮上してきた!ってことなのか?
(切るなら、うちじゃダメなので、国立の大きな病院ね。っと言われていましたので。)


もちろん、赤ちゃんもわたしも元気に無事に出産することが何より優先で、そのためならどんな方法でも構わない!とくくりきれない大きな腹をくくってはいるのですが、6度目の出産、40代になる今になって…。の気持ちは拭えません。
出来る限り、切らずに産みたい!と思っていますし、ここのところの様子は下から〜!な感じでしたので、振り出しに戻った何ともトホホな気分になりました。

次の日から 、普段の生活にお散歩をプラスして、てくてく歩いております。


運動しますよ!下がってください!

おなかをなでながひとり、つぶやいております。





おかげさまで。

舞台や芸術にかかわるお仕事をさせていただいています。

 

昨日はお仕事で30人ほどの子供達と触れ合う時間がありました。

発熱と吐き気で体調が悪く、1時間遅れの楽屋となっている稽古場入り。

全くこんなこと初めてです。

外は冷たい雨でどんよりムード。わたしの身も心もたっぷりどんよりに浸ってしまっていました。

今回は絵や書道、音楽など様々なアートの集まりの中で子供達とのダンスワークショップ。その後の短い作品に携わりました。

床に毛布を敷いて横になる場所を確保し、お弁当にも手をつけられず、うーっとうなりながら時間まで過ごしていました。

スタッフへの挨拶、段取りの確認、などなど済ませなければならないことをしようと立ち上がると、メンバーがこれとこれは済んでます。と報告してくれました。

 

なんと!

ありがたい。もう、やることはないんじゃないかと思いながら、椅子に腰掛けておりました。

オープニングは書道家さんの書き初めパフォーマンスで幕開けでした。

この方はお身体がご自分の意志で自由に動かすことができず、3人のサポートする方に支えてもらいながらお書きになります。

書きたい!と表現する人と書かせたい!と表現する人との息のあったダイナミックな書。

飛ぶ   とお書きになりました。

今年はぶっ飛びたい!とのこと。

1人でできないことも誰かに助けてもらうことで実現する。

そこには決して恥ずかしいとかネガティヴな要素はひとつもなく、信頼や尊敬が輝いていました。

わたしは自分がやらなきゃ!と意気込んでしまう、頑張ってしまう意地っ張りの捻くれ者なので、支えて合う、頼り合うことへの許しをもらった感じがしました。

 

妊娠や出産、その後の子育ても1人では出来ないのです。

誰かと触れ合うことで、誰かに頼ることですくすくはぐくんでいける。

 

おかげさま。

という日本語があります。神様や他人から受ける恩恵の意味「お 陰」に「様」をつけた言葉です。

20代の子育ては、自分が頑張っている感をたっぷりおもてにだしていた気がします。

30代では少し力が抜けて、いい加減がわかりつつありました。

40代での子育てのチャンスをいただいて、もっと頼って、もっと甘えて、もっと支えてもらおうと 「飛ぶ 」の書を見ながら思いました。

 

あなたのおかげさまで。とたくさん言えるような子育てをしたいと思います。

そして、わたしも誰かに、あなたのおかげさまで。と言ってもらえることができたらいいです。

 

長い1日を終えて、劇場を後にする頃もまだ、冷たい雨は降り続いていました。

頬にあたる空気は朝とは違う、凛とした空気に変わっていました。

 

 

 

 

 

 

 

期間限定

久しぶりの更新となりました。

 

気がつけば新年を迎えております。

昨年の秋から土日もたっぷりのスケジュールで、ややオーバーワーク気味でした。

それが原因なのか、妊娠後期にきての貧血が原因なのかわかりませんが、年末年始のお休みに入ると体調がガタガタ悪くなり、横になっていることが多い日々でした。

今まで感じた事のなかった、動悸や息切れがして年齢を感じると同時に、「頑張る」という言葉を一旦自分から剥がす作業をして過ごしました。

 

それがよかったのか、ゆっくりのんびり過ごすことがいつの間にか下手になってしまったのか?

仕事が始まるとすっかり元気になってしまいました。

ありがたいことに、小さな命は無事にすくすく育っており、順調に33週を迎えております。

おなかがとても大きくなったようで、先日はコンビニの店員さんに「双子ですか?」と聞かれてしまいました。

わたしのおなかは過去5回の経験を積んでいますので、ずいぶん伸縮性に富んでおります。助産師さんも子宮底を2度測ってしまうほどです。笑

職業柄、日頃から身体を動かしているのでやや細身でもありますから、おなかだけが目立ってしまうのかもしれません。

よく、前にせり出すと男の子。と言われますが、確かに今のわたしのおなかは前にとんがっております。

先日、通りすがりの男性に「もう直ぐですか?」と聞かれたので、「ハイ」と答えたら、自信たっぷりに「男の子ですよね」と言われ驚きました。

「どうしてわかるのですか?」と今度はこちらが尋ねると、3人の男の子のパパさんで奥様が妊娠されてた時の感じとそっくりだったようです。

おなかの形で性別がわかる。案外当たっているのかもしれませんね〜!

 

そんなこんなで、出産も近づいてまいりました。

赤ちゃんも最近は、狭そうにごにょごにょと動き回りやや痛いぐらいの胎動を感じています。

ギリギリまで仕事を続けるつもりですので、毎朝、おなかに「今日もよろしくね」と声をかけるのがすっかり日常になりました。

期間限定の妊娠生活。

小さな命をおなかではぐくむ時間も残りわずか。今しか感じられないことを、今だから感じることを残しておこうと思います。

 

妊婦さんになると多くの人の優しさ、サービス⁉︎ に触れる機会をいただきます。

スーパーで買い物をしたら、たいてい袋詰めをしてもらったり、買い物かごを運んでもらったり、お車までお運びします!なんてサービスも受けます。
駐車スペースも入り口に近いところが確保してあり、優しい世の中だなぁと感じるのです。
妊婦さんの時は。

しかし、わたしの経験上、無事産んで赤ちゃんを連れての買い物。よちよち歩きのころ、カートから降りたがる子を騙し騙ししながらの買い物。2人の小さい子を連れての買い物の方がよっぽど大変でした。
袋詰めのすきにどこかへいなくなっちゃうし、カートを車の近くに運んで、赤ちゃんを下ろし、荷物を詰め込みカートを片付けに行く。
キャリーで前抱きしながら、下の方の商品を取ったりするのは大変。
ベビーカーを押して進む田舎道は、ガタガタで進み難い。
そんな時、優しい世の中だなぁなんて思う機会はさほどにありませんでした。
優しい人はおります。
助けてくださる人もおります。
でも、妊婦の時よりはるかに社会の目は厳しくなることを感じます。

あらあら。と向けられる視線は、上手くいかない自分を責められている気にもなります。
はじめてのお母さんになったときは、ヘトヘトになって買い物をしていた記憶があります。

出産後、赤ちゃんや小さい子どもを連れたお母さんにこそ、もっと声をかけていただき、優しい世の中であってほしいとおもいます。