はぐくむ

ちいさな いのちをはぐくむ ちいさな日記です

目覚めぬ指

人生初めての帝王切開にて男の子を授かり4カ月が経ちました。

 これまで、ありがたい事に病気らしい病気もせず、医療とは離れた生活を送っておりましたので、身体にメスを入れることなど想像もしていませんでした。
帝王切開手術では 当然ですが、痛みを伴うことなので麻酔をいたします。
人生初めての下半身麻酔。
それはそれは奇妙な状態です。腰から下は自分の意志では動かすことのできない他人の様で、上半身はしっかり自分です。会話もできて泣くこともできます。

必要な時間が終わると、次に待っているのは麻酔から目覚めることです。
他人であった部分はゆっくりと確実にじんわり自分へ戻っていきます。
ああ。あるある!足あるね〜。
人魚姫が海の魔女から足をもらった時の気持ちが少しわかる気がしました。

左足の人差し指。

この部分だけは小さな王子様を授かった日から目覚めることなく、時間が止まっています。
夜になると時々痛みを感じること以外は日常生活に困ることは無いのですが、身体の細部に神経を使って行う仕事をしているため、多少不都合というか、違和感というか、これまでとは違う感覚。
マッサージなど思いつく対話をその部分に仕掛けていますが、未だ目覚めることなく4カ月前のまま戻ってきておりません。

しかし、目覚めぬ指以外は元気! 王子様も元気!  優しさに守ってもらって、これまでよりもずっと穏やかでやわらかい時間を過ごせていますから
まあいいか〜!
そのうち忘れた頃に帰ってくるだろう。と放っておけるようになった4カ月の日です。

人魚姫は王子様のことを想い、再び元の姿に戻らず海に飛び込み泡となってしまいます。

わたしも王子様が元気に過ごせているのなら、目覚めぬ指があってもいい。




大切な人が幸せに過ごせるのであれば、泡となっても構わないのです。