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はぐくむ

ちいさな いのちをはぐくむ ちいさな日記です

初めの一歩

月に人類がおろした一歩。

ベルリンの壁が壊れて向こう側に踏み入れた一歩。

異国の地に希望を抱いておろした一歩。

 

彼の歴史的一歩はなんでもない日のなんでもない時間にやってきた。

 

お風呂で大好きな「いーとーまきまき」🎶を歌った後、バスタオルに包まれた彼を部屋まで連れて行くと、裸で身軽になったのか「きゃっきゃっ」と座って手を叩いてはしゃいでいる。

オムツを履かせようと近づく気配をかんじると、四つん這いになってかわいいお尻をプリプリさせながら一目散に逃げ出して、追いかけるわたしを時々確認しながら部屋いっぱいに動きまわる。

お風呂上がりの恒例の追いかけっこ。

すぐに捕まえては面白くないので (逃げてる方が)まてまてー!と追いつきそうで追いつかない、届きそうで届かない距離をキープしながら追いかける。

彼は両手と両膝を勢いよく動かして、ゲラゲラ笑いながら逃げ回る。

このゲラゲラはとっても大切で、声を出しながら逃げてくれないと敵はなかなかヘタレない。持久力は思ったよりあるので、ただ逃げたのでは追いかけるこちらが先にバテてしまう。

そろそろこちらの限界と時間の都合上着替えて欲しいこともあって、良きタイミングで、つかまえた〜と後ろから抱きかかえる。

この時、びっくりするのか勢い余っておしっこをかけられちゃうこともたまーにあるので、力まずソフトにでも劇的に。

 

そんなこんなを繰り返して、やっとの思いとなかなかの時間を費やしてお着替えを完了させると、白湯かお茶を飲んでクールダウンしてお布団に誘う。

いつもならば寝る前の一杯でかなり落ち着くのだけど、昨夜は興奮が冷めないままテンション高く動き回っていた。

違うもの飲ませちゃったかな?

 

片手を壁に添えて立ち上がった彼とフッと目が合った。彼もじっとこちらを見つめている。わたしの心が彼の深い湖の底に沈んでいくような気がしてしばらく動けないでいた。

ほんの一瞬。きっと10ヵ月を共にした母親以外は気づかないかもしれない一瞬。

彼はキリッとした表情になった。それは、世界記録を狙うトップアスリートのような、難しい手術に挑む外科医のような、スポットライトに向かう前の暗闇に立つダンサーのような、覚悟の眼差しだった。

 

その手は壁からふわりと離れ翼となって、その足は大地からゆっくり丁寧に剥がされ彼の身体のほんの少し前へ下ろされた。

思わず手を出そうとするわたしに待って!と言っているかのように、じっと見つめたまま、翼で上手にバランスを取りながらもう片方の足を前へ。

 

小さな時間の小さな一歩が彼の歴史に刻まれた日。

 

春風が吹いてチューリップが咲くぽかぽか陽気には彼と手を繋いでお散歩できるといいなぁ。