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はぐくむ

ちいさな いのちをはぐくむ ちいさな日記です

誰かの初めてに立ち会える日

今日 初めて寝返りができました。

 

これまで天を眺めていた彼は自分の力で、自分のタイミングでくるりと返り、世界には色とりどりの花が咲いて、蝶や小鳥が楽しげに飛び交っていることを知りました。

 

覗かれるのではなく、向き合うことを知り見上げることを知りました。

自分の頭はそこそこ重みがあって、ママの顔はまあまあ弛んでることに気づいたでしょう。

 

身体をねじってしばらくもがいていました。

もう少し。もう少し。

手を出して助けてあげたい気持ちをぐっとこらえて、ただただ見守っておりました。

「自分でやってみるから、見ててね!」

そう言っているように感じたのです。

もう少し。もう少し。

 

下半身は完璧にお腹が床についていますが、上半身は90度のまま。

上になっている肩を揺らして何度か挑戦していましたが、頭がなかなか起こせません。

私も手術後最初に起き上がる時、頭ってこんなに重いのか!と気づかされました。

上になっている腕を動かし、指では畳をもぞもぞつかむような動きをしていました。

 

くるん。

 

その時は静かにやってきました。

大きな偉業を成し遂げるときは意外にもあっさりしているのかもしれません。

彼もキョトンとしておりました。

 

できたー!

私はうれしくて叫んでしまいましたが、本人は平然としておりました。

あら。できちゃった。ってな感じ。

 

 

 

 

誰かの「初めて」に立ち会えることは子育ての醍醐味のひとつだと思います。

おなかに命として宿って、この世に生まれて始まる 「初めて」の力。音。

いくつもいくつも重ねて創られる 生きるパワーのハーモニー。

 

 

 

 

誰かの「初めて」に立ち会える幸せを、誰かの「最後」を尊く思うことへ。

誰かの「初めて」に立ち会える喜びを、誰かの「最後」への優しさに。

つなげていける生き方でありたいと思います。

 

梅雨のある日、世界の見方が変わった日。

 

 

 

 

 

 

 

目覚めぬ指

人生初めての帝王切開にて男の子を授かり4カ月が経ちました。

 これまで、ありがたい事に病気らしい病気もせず、医療とは離れた生活を送っておりましたので、身体にメスを入れることなど想像もしていませんでした。
帝王切開手術では 当然ですが、痛みを伴うことなので麻酔をいたします。
人生初めての下半身麻酔。
それはそれは奇妙な状態です。腰から下は自分の意志では動かすことのできない他人の様で、上半身はしっかり自分です。会話もできて泣くこともできます。

必要な時間が終わると、次に待っているのは麻酔から目覚めることです。
他人であった部分はゆっくりと確実にじんわり自分へ戻っていきます。
ああ。あるある!足あるね〜。
人魚姫が海の魔女から足をもらった時の気持ちが少しわかる気がしました。

左足の人差し指。

この部分だけは小さな王子様を授かった日から目覚めることなく、時間が止まっています。
夜になると時々痛みを感じること以外は日常生活に困ることは無いのですが、身体の細部に神経を使って行う仕事をしているため、多少不都合というか、違和感というか、これまでとは違う感覚。
マッサージなど思いつく対話をその部分に仕掛けていますが、未だ目覚めることなく4カ月前のまま戻ってきておりません。

しかし、目覚めぬ指以外は元気! 王子様も元気!  優しさに守ってもらって、これまでよりもずっと穏やかでやわらかい時間を過ごせていますから
まあいいか〜!
そのうち忘れた頃に帰ってくるだろう。と放っておけるようになった4カ月の日です。

人魚姫は王子様のことを想い、再び元の姿に戻らず海に飛び込み泡となってしまいます。

わたしも王子様が元気に過ごせているのなら、目覚めぬ指があってもいい。




大切な人が幸せに過ごせるのであれば、泡となっても構わないのです。










完全無敵のモテ期

ぼくが微笑うと
小さな女の子も、かわいい女子高生も凛としてるあの美人のお姉さんも、60年前ぼくのお肌と同じくらい張りのあったであろう熟したお姉さんもみーんな

「かわいい〜!!」って言ってくれます。

 あたまをなでなでしてくれて、ほっぺをムグムグ、足をこちょこちょ。
青春期にはおそらく勇気がいるであろうかわいい子の指を握ることも出来るし、お姉さんの胸に抱かれて顔を埋めても怒られない。いい歳になって初対面の人にこんなことしたら犯罪だ。

  眠っていても 「寝ちゃってるかわいい〜」
 よだれでべちょべちょになっていても 「お腹すいたのかしら〜。かわいい〜。」
 大声で泣いても 「ああ 泣いてるの?かわいい〜。」だ。
女子高生は「手ちっちゃ〜い。」とか 「足ちっちゃ〜い」とかで大喜びしてくれる。
ぼくは「あたりまえじゃ!」と突っ込みを入れているが気づいてないみたい。

ぼくはおじさんにもモテる。
特に梅雨なのに頭に秋の気配を感じるおじさんは、ぼくの小さな頭にびっしり生えたコシのある黒々とした髪の毛を見て、「俺より髪の毛あるじゃーん 」 「なぁ〜!ぼく!」ハハハ〜。
と、突然コンビ結成。周りの人を笑の渦に巻き込んでしまう。
絶対すべらないので、おじさんも満足気。ぼくのおなかをポンと鳴らしてくれる。

どうだ!こんなにモテモテの時期などそうそうやってこないだろう。

今、ぼくは完全無敵のモテ期なのだ!!



はじめまして!

はじめまして

ご縁がありまして、ママのおなかにやってきました。

生まれる前にぼくが苦しくなっちゃったサインにお耳の大きな先生が気づいてくれて、すぐに助けてくれました。



無事にママのおなかから出られたぼくにママは 「はじめまして」とほっぺにキスしてくれました。

ママが笑っていた時も涙した時も、お仕事の時も眠る時もずーっと一緒だったから、ぼくはぜーんぶ知っていたけど、お顔を見たのは初めて。

この人がママなんだね。

ぼくは元気だよーってみんなに伝えたかったから、とびっきりの大きな声を出してないたよ。そうしたら、お耳の大きな先生も周りにいる美人の助産師さんもみんなにっこり笑ってくれました。



生まれるとぼくをいろんな人が抱っこしてくれました。
ふっくらした手の人、ゴツゴツしてる人、心地よく包んでくれる人、おっかなびっくりの人。

パパに抱っこされた時は嬉しかったなぁ〜。
大きな手で包んで持ち上げてくれて、ゆっくりふんわりゆらゆら。
ぼくを守ってくれる優しいあったかい腕の中。
たかいたかーい なんて言ってたけど、パパ。もうちょっとしないとその面白さはわかんないよ…。


ぼくが泣くと、オムツかな?おっぱいかな?とママはいろいろ推測してくれて、ぼくにたくさん話しかけてくれます。いつも一回でぴったり当たるとは限らないんだけど、ママがぼくのことをいっぱい見てくれることが嬉しくて、抱っこだけして欲しい時も泣いちゃうの。
近頃はちょっぴり思う通りに身体を動かせられるから、お腹がすいたらおっぱいを吸うお口にしてみたり、オムツを替えて欲しい時は足とおしりを動かしてみたりすると、ママはサインをわかってくれていいプレーをしてくれるよ。

おしゃべりの真似も出来るようになってきて、ぼくもいっぱいおしゃべりするの。なかなか全部は伝わらないけど、ぼくがしゃべるとみんなが笑顔で喜んでくれるから、ついついサービス精神が働いてぼくもとびきりの笑顔でたくさんおしゃべりしちゃいます。

みんなが笑顔でぼくのことを見てくれるから、ぼくもみんなの顔を真似して笑顔になる。
そうすると、かわいい〜って守ってくれる。
ママもなんだか幸せそう。

ぼくはそれが一番嬉しいのです。



みなさまどうぞよろしく。








命名

生まれたての命は透き通る湖のような目を開いて、お母さんはこんな顔をしていたんだね。
ぼくのことをよろしくね。
と語りかけます。
そのシワシワのおててが、あんよのなんと愛おしいことでしょう。
胸に抱くと何の迷いも疑いもなく、身をゆだねて微笑みをうかべます。

命はまだ「赤ちゃん」と呼ばれていて、何者でもない時間を過ごしていました。

アマゾンの奥地に生活する ヤノマミ族 の女性は出産した我が子が、人間なのか精霊なのかを母親自身が決めます。
人間ならば育てるため抱いて森から家へ連れてかえります。
精霊ならばバナナの葉に包み木に吊るして森へかえす。


赤ちゃんはみな精霊として生まれてきて、なまえをつけることによって人間として生きていくようになるのだと思えてなりません。
なまえの力が加わることによって、生きていく色や響きスピード感とか、そういうその人独特の雰囲気がはぐくまれる気がするのです。
離れることのないずーっと纏うベールのような…。

わたしはそんな大層なものようつけられませ〜ん!

ってことで、この責任はお父さんに擦りつけることにしました!
テストに書くのが長い。とか 呼びにくい。とか 変なあだ名つけられた。などのクレームは一切受け付けずに   ああ〜お父さんがつけたからね〜  で逃げ切る作戦です!


生まれてしばらくして、つよくてしなやかなベールをかけてもらいました。

そうしてもらえたことがとても嬉しく幸せでした。
彼はこれからどんな色に染まるのか?どんな響きを聴かせてくれるのか?
楽しみでなりません。

素敵ななまえをありがとう。









誕生 終幕

目が覚めると身体が小刻みに震えていました、自分の意思ではどうすることもできずそれはだんだん大きくなって私の身体を震えが乗っ取っていきました。
不安と恐怖が一気に襲ってきて、目の前もぼんやりスモークがかかっているようでした。

身体から剥がされるような感じがして、ふわふわ。
どこにも行かないように、迷子にならないように手をつないで欲しくて、左手で誰かの手を探していました。ちゃんとつかまえていて欲しくて。

左手がナースコールに触れたのでしょう
いそいそと看護師さんがきてくれました。毛布をかけてもらい、先生呼びますね。と肩に触れてもらいました。

ここまでは、ぼんやり覚えています。
なんだか慌しい空気を感じながら、何人かの声を遠くで聞きながらまた深い暗い底にゆっくり沈んでいきました。




眠りから目覚めさせてくれたのは、小さな星の下の王子様。
透明の宇宙船 の中で黄色いガウンに包まれ、まだ何者でもない真っさらな命がスヤスヤ眠っていました。

私はしあわせだと心から思える。この子をしあわせにしたいと心から思う。
それが本当にうれしくて。うれしくて。

生まれたよ。

まだ、ふわふわ感が残ったまま、知らせを待っているであろう方にやっと届けることができました。

手術から12時間。再び彼の頬に触れて、小さな小さな手が私の指を握った時。
迷子にならないで帰って来れた。とほっとしました。


ありがとう。


この言葉をかけてもらったことが、この日まではぐくんできたことをきらめく宝物にしてくれて、これからはぐくむことへの勇気を注いでくれました。

小さな優しい時間に生まれた奇跡はいま力強く生きています。


ありがとう。











誕生 2幕

ストレッチャーから見える廊下の天井には、蛍光灯が冷たく光っていて夜中の病棟は静かなトンネルでした。
ドラマや映画で観るシーンは、知らせを聞いて慌てて駆けつけた、家族や愛する人に見送られながら手術室へ向かう。
っていうのが定番ですが、現実はなかなかそうもいかないようで、わたしは一人、手術室までの変化の乏しい天井を車窓からの田んぼの風景のようにただ眺めていました。
看護師さん達のちょっとした雑談から、これからのことがわたしにとっては初めてでもここではそんなに特別なことではないことが分かり、少し緊張がほぐれる気がしました。

この命を生むときは、ひとりがいい。

おなかに命を感じた時から、ぼんやりそう思っていました。
そうなる気がしていたのです。

ですから寂しさはなく恐怖も感じず、淡々と進められる準備に身体を預けました。

手術台にはじめて上がると、無影灯がお星様の形をしていてキラキラとっても奇麗でした。
こんな時にも奇麗なものをキレイと感じられる自分に少しびっくりしましたが。

この子はこのお星様の下を生まれる場所に選んだのだな。と思うと、なんともこの子らしいと納得しました。
お星様の下で闘ってきた命を無事につなげることができますように。
ただ、それだけを祈っていました。
ほんとうにそれだけ。

麻酔科の先生が声をかけて、しばらくすると私は人魚になりました。

目の前には緑のカーテン?があり、その向こうも私なのだけど私のものではない感覚。
なんともへんてこな感覚です。

この手術室に多く見られる  「深藍色」こきらん色 はどうして使われているのかな?
緑だからリラックス効果?
それとも、戦国時代に勝ち色として好まれていたので、手術が上手くいくようにかな?(しんらんと読んで色はもっと藍にちかいのですが)
など、今気にしなくてもいいじゃんってことが気になっていました。
ほとんど読まれていないこのブログにおいでの方(ありがとうございます)の中で、ご存知の方がいらっしゃっいましたら、教えてくださいね!

そんなこんなで、執刀医の先生の声でいよいよ始まりました。

聴覚と嗅覚が鋭くなっていて、聞こえる音から匂いから可能な限りの想像を膨らませました。
横にいてくれる看護師さんは逐一状況をライブ中継してくれましたので、頭の中で答え合わせしながら、もう直ぐ赤ちゃんでますよ〜!の掛け声を待っていました。

赤ちゃんでまーす!!

はい!どうぞ!

と言ったか言わなかったか?

ふんギャーーーー!

彼は脚がまだお腹の中だというのに、いそいそと声を上げてくれました。

おなか押しますねー。!

はい!どうぞ!

とは言いませんでした。が御構い無しにぎゅーっと押されて無事に脱出成功。

んぎゃ〜!!ぎやーーーーーー。。

身体いっぱい手術室いっぱいの産声。




産むと覚悟したものと生まれると覚悟したものと産ませると覚悟したものが奇跡をおこした瞬間でした。

ふにゃホカの彼の頬に

ようこそ。

のキスをしました。

流れたひとすじの涙で今までのことが胸の奥に優しくそっとしまうことができました。
長い妊婦生活の終わり、そして、彼との新しい始まり。


眠ってもらいますね。

その声を聞いて私はスーッと眠りに入りました。


次に彼に会えたのは12時間後。

容態の急変で命を医療に助けていただくことになるなんて、全く思っていませんでした。


つづく