はぐくむ

ちいさな いのちをはぐくむ ちいさな日記です

おなか触ってもいいですか?

7ヶ月になって、おなかもなかなか立派になってきました。
誰がどこから見ても、妊婦さんです。

最近、一緒に仕事をする20代の男の子が 「おなか触ってもいいですか?」
と、ちょっぴり恥ずかしそうに言ってきました。
妊娠は期間限定なので、今しかできないこと、今しかしてあげられないことを大事にしようといつも思っています。ですので、触りたい方には、どうぞどうぞとおなかを差し出します。
直接じゃないですよ!服の上からね!

その男の子にも、どうぞ。と伝えますと、でわ!一瞬拝むような間を開けて、おそるおそるおなかに手を当ててくれました。でも…。
そこ、胃だけど…。と言いながら、わたしは彼の手をちょうどおへそのあたりへ誘導しました。

なんかいいですね〜。ここに命があるのですね〜。
頬を緩ませ、目尻を下げて、照れくさそうにでもしっかりおなかの赤ちゃんを感じているようでした。
彼のゆるんだお顔にわたしもほっこり。

赤ちゃんって本当にすごい!
新しい命はそれまでの迷いや不安を一気に吹き飛ばして、周りの空気までも淡いクリーム色に染めてしまいます。
抱く人の頬を微笑みに導いて、その眼を透明によみがえらせてくれます。
おなかにいるときから、大きなエネルギーを発しています。

いのちをはぐくむって本当に幸せなことです。
わたしもおなかに手を当てて、来てくれてありがとう。と小さくつぶやきました。

もうすぐ会えます。ちいさなあたらしいいのちに。

扉を開けるまで。

ついこの前までおなかにいて、トイレまで追っかけていつもくっついていたのに。

今日は大切な子の1人が自分で選択した道への挑戦日。
1人で出かけて行きました。 
まいにちおっぱいをあげて、おむつを替えて、手をつないで歩いた日がとても愛おしく感じます。
手を離れていく嬉しさと寂しさがごちゃまぜにやって来た感じです。

つないだ手をスーッと離して、無邪気にブランコへ走っていく時も、振り払ってドカドカ目の前を過ぎていった時も、じゃね!と笑顔で出かける時も、ああ。後ろから見守ることしかできないなぁ〜と思ってきました。

自分の手で扉を開けようとしている時、その後ろ姿がきらきら輝いているように。
開ける術をいろいろためすことが出来る知恵を持てるように。
扉の前に立つ勇気があふれるように。

ただただ、わらって見守ること。

はぐくむってそういうことなのかもしれません。



逃げ回る胎児くん

このところ休日も仕事や学校行事で忙しかったので、月曜日だけどお休みをして、妊婦健診へ。
産婦人科は心地よい照明と音楽が流れ、淡い色の壁紙はふんわり暖かい。
掲示してあるポスターやマタニティーヨガ、母親学級の案内は、集中して読むにはいい具合の文字の大きさで、急かされず待ち時間もちょうど良い混みようだったので、自然にウトウト…。
しばらくの間、リラックスタイムを過ごしておりました。
わたしは…。

そんなことはお構いなしに、おなかの中では、元気アピールをここぞとばかりにしてくる胎児くん。
はいはい。よしよし。と、おなかを撫でてみますが、一向に収まらず。
洋服の上からでも、おなかが波打つように動いているのがわかるくらいにヒートアップ。
元気いっぱいなのか、お調子者なのか…。
親の心子知らずは、すでに始まっていると苦笑しながら、わたしも半ばムキになってリラックスしていました。

呼ばれて助産師さんが待つ診察室へ。

まずは恒例の体重測定。横で数字を睨む目にビクビクしながら、そっと乗ります。
べつに、そっと乗っても勢いよく乗っても自分の体重が軽くなるわけではありませんが。
 相変わらずの右肩うなぎ登り。営業マンか会社経営者だったら、どんなにうれしいことでしょう。
と、毎回同じことを思ってしまう自分にがっかりしながら、逃げるように体重計をおりました。
洋服の分の500グラムを差し引いて記録してくれることを、親切と思わず、恩着せがましいと思ってしまうのは、わたしのねじれた性格なのでしょうね。

今日は赤ちゃんの推定体重を出してみますねー。の声に ほほうー。と感心しながらエコーの画面を見ていましたら、動く動く。頭は容易に測れたのですが、胴体、大腿骨を測るのに助産師さんはあららっと若干手間取っておりました。
しかし、相手はプロと機械ですから、胎児くんに勝ち目は無く⁉︎
推定体重 971g。
ちょっと大きめかな〜。との評価付き。

続いて心音を。
エコーでしっかり胎児くんの位置(只今逆子)を確認済みの助産師さんは、迷わず狙った場所で見事キャッチ。
涼しい顔で聴く助産師さんの顔が曇ったのは、20秒ほどたった時でした。
ゴゴゴゴーっと音がしたかと思ったら、心音は聴こえなくなりました。
逃げた!とは言わなかったけど。
その後、まるで迷子を探すように助産師さんの手は、わたしのおなかの上をしばらく駆け回っていました。
上手く逃げたようで、心音が見つからず再びエコーで確認。
おなかの上の方で知らんぷりしている(かどうかはわかりませんが)胎児くん発見。
はーん。そこにいるのねっと助産師さんがニヤリ。
再び心音をキャッチして観察する助産師さんは、逃げるなよーっと念力を送っているようでした。
もう少しってところで、またまたゴゴっと音がしましたが、そこはプロ。
逃がすものかと、すかさず手を動かして心音を離しませんでした。

順調に育っている様です。

チャンチャン。

こころ

なんて激しく美しく儚くやさしい愛にあふれているのでしょう



こころ

わたしのこころは湖水です
どうぞ漕いでお出でなさい
あなたの白いかげを抱き
玉と砕けて
舟べりへ散りましょう

わたしのこころは灯火です
あの扉を閉めてください
あなたの綾衣の裾にふるえて
こころ静かに
燃えつきてあげましょう

わたしのこころは旅人です
あなたは笛をお吹きなさい
月の下に耳傾けて
こころ愉しく
夜を明かしましょう

わたしのこころは落ち葉です
しばしお庭にとどめてください
やがて風吹けばさすらひ人
またもや
あなたを離れましょう

妊婦と秋の闘い

つわりがおさまったのが9月。
それまで、午後の紅茶 ストレート しか口にできなかった生活が一変して、なんでも美味しく食べられるようになった9月。

暑くもなく、心地よい季節の秋。妊婦にとっても過ごしやすい時間です。
コスモスの花や木々の葉も色鮮やかになり、心にとっても穏やかになれる時です。
ママが穏やかだとおなかの赤ちゃんにもいいのです。
秋の夜長、月の光にぼんやりするのも風情があります。
異国の話を綴る本を読むのも遠出が難しくなる妊婦にとっては、楽しめる時です。
秋はマタニティーライフを送るのに、ぴったりの季節です。

美味しい食べ物でにぎわう 食欲の秋  を除いては…。

栗やお芋、柿に梨に葡萄、サンマもサバも呼んでいます。
つわりがんばったね〜。これからはなんでも食べられるよー。
赤ちゃんも大きくなるから栄養つけて〜。
運動会のお弁当も家族の誕生日も、ピクニック日和の秋空もみーんな呼びかけます。

甘い誘いにふらふら〜っと揺れてると、待っているのは、母子手帳に貼られた産婦人科の体重増加グラフ。
営業マンなら嬉しい右肩上がりも、妊婦にとっては恐怖のウナギのぼり。
数字を讃える上司ではなく、数字を睨む助産師さん。
かけられる言葉は、よくやった〜ではなく、よく増えた〜。

そして、これ以上ハイペースにならないでくださいねッ!


妊婦と秋の闘いはしばらく続きます。





満月の日

今日は満月。月の光でうっすら明るい夜です。

おなかも満月のように大きくなってきました。
ひと目で妊婦さん!と誰もがわかるようになり、スーパーのレジ係の方がカゴを運んでくれたり、人の親切に触れる機会もたびたび。
赤ちゃんや同じくおなかにはぐくむ方がよく目に入ってくるようになりました。

はぐくむ時間の間、それまでは気に止めなかったことがスーッと心に入ってくる瞬間があります。
木々の色の移り変わり。
風の音。
花のにおい。
活字のことば。
耳にする言葉。
工事現場のリズム。
ラジオの音楽。
時計の音。

身のまわりの世界が特別に映る瞬間。
思わずおなかを撫でています。
まだ見ぬ世界は美しいことを伝えてあげたくて。


おなかのまだ見ぬあなたに無事会えますように。
喜びの中で生まれてくることを伝えられますように。
この子をはぐくむことで誰かを幸せにできますように。

満月の日に。



おなかに帰る⁉︎

末っ子ちゃんの赤ちゃん返りが日に日に増してきました。

エコーの写真を何度もみたり、おなかに話しかけたり、なでなでしてみたり。

楽しみにしている時もあるのですが、そうかと思えば、おかあ〜さん!おかあーーさん!と何度も読んでみたり。

わたしの洋服の端をつまんで離さない。

さてさて。始まったかーと覚悟はしていましたがなかなか大変。

 

昨晩はついに、おなかに帰る!と言いだしました。

 

無理もありません。つい、4年前まではおなかにいたのですから。

この4年間は不動の末っ子ちゃんのポジションをキープしてきたのですから。

突然のライバル出現に戸惑っているのも、よ〜く分かります。

ほかの子供たちもそうでした。必ずやってきますこの時間。

この時間はなるべく本人の希望をかなえてあげることにしています。

抱っこ。おっぱい。おんぶ。ぎゅー。絵本。お風呂。などなど、大抵は無理難題はありません。

ただただかまってほしい。そばにいたい。それだけです。

恋する人に想いを寄せる気持ちと変わりません。

ちょっぴり鬱陶しいけど、そんなに甘えてくれるなんて悪くない。

かわいいわね!

そう思うことにしています。

そして、寝る前には  いちばん大好きよ。と言ってあげます。

大抵はこれで乗り切ってきました。そんなに長くは続きませんから。

 

しかし、おなかに帰る!はどうしたらいいのか?

えー。どうするの?と末っ子ちゃんに尋ねると、簡単でした。

わたしのTシャツをめくって、頭からすっぽりかぶり小さく胎児のポーズでおさまっていました。おなかにほっぺをぴったりつけて、むにゃむにゃ。

おなかの赤ちゃんとお話しているようでした。

おかげでTシャツはノビノビ、ベロベロになりましたが、末っ子ちゃんはすっかり落ち着きそのままスヤスヤ寝てしまいました。

わたしも懐かしくほんわか。

おなかは赤ちゃんがいるからダメ!おねえちゃんになるからダメ!

なんて言わなくていいのです。

一段落したら、ちゃんと自然におねえちゃんになってくれます。

頼もしい母の片腕となってくれます。

 

この時間。生まれてからの強力サポーターを得るための貴重な時間の投資期間。